2021/06/28
コンサルコラム
製品を構成する単なる部品のリストなのだが、なぜ製造業にとって不可欠であり、業務プロセスに対して、何を貢献するのだろうか。
●コンカレント・エンジニアリングのベース
製品の品質やコストは、この段階で大部分が決定されると言われる。開発の初期段階から製品構成を模したBOMを作成して、それに付随する情報を追加することで、開発の成果物や進捗を共有することがねらいである。
一人で設計するのであればこの段階でBOMなど必要ないのかもしれないが、ほとんどの企業では、設計部門内のチームや部門を横断してのコンカレント・エンジニアリングが必要となる。例えば、設計者10人で、5つのユニットで構成される製品のチーム設計を行うとする。このときにBOMがなければ、他の人はどのような構成で設計を進めているのか、聞かないと分からない。また、開発初期段階から、製品設計と生産技術検討を並行化することもある。その場合でも、BOMをキーとして、図面や3Dモデルを共有しながら並行開発を行う。
また、製品コストの80%は、出図前に決まると言われる。出図後、コストダウン検討を行うよりも、出図前にコストダウン検討を十分にする方が、制約がはるかに小さいからだ。BOMにコストの目標や見積値、実績値を登録し、達成度を管理するのである。コストは、生産技術や購買が実際の見積を行うので、出図前のBOMに付与されたコスト情報を共有しながら部門横断で検討を行う。
●生産管理プロセスにおけるマスター情報
BOMは生産管理プロセスにおけるマスター情報であり、生産はこれに基づいて計画的に実行される。設計部門からリリースされたBOMや図面を元にして、工場で生産マスターとしてのBOMを完成させる。購買部門は、設計部門が定義しなかった発注用の部品の追加、自社調達が不要な部品の削除、調達の標準リードタイム設定などを行う。生産技術部門は、生産工程で必要な中間品の設定や、工程情報と標準作業時間などを登録する。
BOMの精度が高いと、生産プロセスの精度は高くなる。逆に精度が低いと、マニュアル管理が増加し、管理負荷の増大やミスの発生など、円滑に生産が進まないという問題が発生する。
●保守・サービスの品質・精度向上
保守やサービスは、生産した製品の出荷後や生産終了後も継続する。スマイルカーブ(製品開発の上流と下流で高い利益率を上げることができるというモデル)でも語られるように、保守やサービス事業で高収益を上げる企業は多い。複写機のトナーに代表される消耗品や、工作機械などの生産装置のサービスパーツの提供や修理・メンテナンス事業が該当する。
BOMはサービスパーツとして供給可能な部品のリストを提供する。また、生産設備などの受注生産型のメーカーでは、保守・サービスの場面で、出荷した製品構成を正確に特定することによるメンテナンス時間の短縮、保守履歴の綿密な管理により、継続的な顧客との関係性を築くことに貢献するのだ。
(「BOM再構築の技術」から抜粋し改編した内容です。)
開発・設計 | 開発検討、チーム設計、コンカレントエンジニアリング 部品種類数削減 製品コード、部品コード採番 製品機能・構成管理 原価企画(部品別目標原価設定) |
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生産 | 工程情報管理 調達・在庫管理用中間品目設定 内外作設定 所要量計算 製品別原価計算 生産計画立案 調達計画立案 製造指示 |
保守・サービス | サービスパーツ(品番)の特定 出荷構成の管理 保守履歴の管理 |